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それはまだ太陽と月が表と裏だった頃のお話し。 小さな女の子が小さな奇跡を起したお話し。 それは、誰もがもっていて忘れてしまった易しい魔法。 それは、まだ誰も見たことがない様な優しい魔法。 きっとあなたも。そして世界中のすべての人の心にそっと光を灯す素敵な物語。 「魔法手引書 第705巻」 P12 満月の夜の***茸は眠りにつよし。 P28 *月の第四回目の朝露ののった***草は憂鬱につよし。 P40 ***の葉と***の果汁のジャムは記憶につよし。 P128 三つ滝に眠る***のウロコは腹痛につよし。 P188 赤土に生える***の種は頭痛につよし。 P482 世界樹の長兄の枝に棲む***の羽はさがし物につよし。 P621 虹のたもとに咲く**の花と***に閉じ込められた光はあらゆる病につよし。 P693 火の國のドラゴンの***は老いにつよし。 P742 深海の暗黒窟の八ツ首の***の四番目の魂は時間につよし。 P894 下弦の夜の白き***の涙は死よりもつよし。 「バタン!!!」。。。チムチムは今日も読めなかった魔道書を閉じました。 チムチムは大大魔女様(ダイオオマジョ)のシスの家の屋根に堕ちた女の子。 この魔法のある世界の黒き森には沢山の魔女達がいます。 最も魔力を沢山持つシスを筆頭に四大魔女達の存在により規律よく平等に平和な森がありました。 魔女は生まれながらに“色”の属性を持ちます。 そしてその色が濃ければ濃いほど沢山の魔法を使えるのです。 2つ以上の命を持つ魔女達ですが、色の属性が濃い魔女になるとより沢山の命をもちます。 シスにいたっては暗黒よりも深い黒と9つの命をもつほどです。 ところがチムチムの得た属性は「白」そして命の数はたったのひとつだったのです。 魔女の森は大騒ぎ。右へ左への大問題になりました。 この子は何なのか?この森に堕ちたということは魔女。ただし魔力も無く。命もひとつ。 そんな魔女はいままで一人だっていたことが無かったのです。 規律に守られた森は大混乱。四大魔女達はチムチムの科学のある世界への追放まで話し合いました。 そんな中でシスだけは冷静でした。自らの家でチムチムと共に住み彼女が何なのか。 ちゃんと答えを出してあげましょう。と、言うのです。 そうやって、 ようやくチムチムはこの森で生きていく事になったのです。 ただしそれは簡単なことではありませんでした。 この森では何もかもが魔法で行われるのです。 扉を開けることから、料理(ドングリなど山の木の実を美味しい御馳走に変える)や家事。 何処かに行くのも隠れんぼだって空中散歩だってもちろん魔法なのです。 でもチムチムはへっちゃらでした。森中の扉にはノブを付けて回ったし、森の木の実も上手に料理できました。 家事も丁寧にこなしたし。何処かに行くのもゆっくりと自分の足で歩きました。隠れんぼだって誰よりも 上手だったし。空中散歩だって友達のシロフクロウの背中に乗ってみんなと一緒に遊べました。 そんなチムチムですがひとつだけ悲しいことがありました。 それはシスの家に何万とある本が、ただのひとつも読めなかったことです。 魔法のある世界の本はすべて魔法で書かれているのです。 魔力が高ければ高いほど難しい本が読めるのです。 自分にもどうにかして魔法が使えたら。っと考えていたチムチムはいつだって「今日は読めるかも。」と 本を開くのですが、魔力の無いチムチムはいつだってどんな易しい本でもタイトルと目次(大切な所は ちゃんと読めない)しか読めないのでした。 そんな時はチムチムはとっても悲しい気持ちになります。 でも、チムチムが悲しい気持ちの時にはシスはあたたかい手でチムチムの頭をそっと撫でながら 「焦らなくても大丈夫よ。貴女の未来にはいくらでも可能性があるの。魔法なんて使えなくても 貴女には貴女の素敵な未来が待っているのよ」と慰めてくれるのでした。 チムチムはシスが大好きでした。そして心から尊敬していました。 シスとシロフクロウとこの黒い優しい森の生活がこころから幸せでした。 ところがある日シスが重い病にかかったのです。 シスはベットに沈み込むように眠りについてしまいました。 四大魔女がシスの部屋に集まり話し合いが始まりました。心配だったチムチムはそっと話し合いをのぞいていました。 その時ベットに横たわるシスの身体が一瞬透明になりました。そしてさっきよりもあからさまにシスは細く暗く 弱々しくなりました。それは一見して目では見えなくなるほどでした。 「8個目の命が逝った」四大魔女の一人が叫びました。「時間がない!急いで対処しなくては!」 四大魔女達は一斉に家を飛び出し各々の魔法を採りに旅立ってしまいました。 家に一人取り残されたチムチムは怖くなりました。『シスが死んじゃう!』 居ても立ってもいられません。何かしなくちゃ。何かしなくちゃ。 でも魔力の無いチムチムにはシスの側で手を握っていることぐらいしか出来ませんでした。 幾日か経ち、四代魔女の一人“深き森の黒の属性”を持つ魔女「フォレス」が帰ってきました。 彼女は虹のたもとに咲く千年草の花とファルコンの瞳に閉じ込められた光を手に入れてきましたが シスの病には効きませんでした。 次に帰って来た“溶岩の黒の属性”を持つ魔女「ラバ」は火の國のドラゴンの心臓を採って帰りましたが シスの衰弱は止まりませんでした。 その後“深海の黒の属性”を持つ「ヴェド」は暗黒窟の八ツ首のワイヴァンの四番目の魂を採って帰りましたが シスの時間は戻りませんでした。 そして四代魔女の最後の一人“深夜の黒の属性”を持つ「キャット」は白いユニコーンを見つけられずに帰って来たのでした。 四大魔女の皆が諦めて帰ってしまってもチムチムは諦められませんでした。 そして暗いある晩のことシスは静かに9番目の命とともに逝ってしまったのです。 その晩チムチムは涙が涸れるまで初めて泣き続けました。 次の朝。 黒き森に奇跡が起こりました。 泣きつかれて眠るチムチムの頭をそっと優しく撫でてくれるあたたかい手があるのです。 優しい太陽の光と甘い花の香りの風に目を覚ましたチムチムはそのあたたかい手に気がつきました。 チムチムは後から後から流れ出る涸れたはずの涙を止める事が出来ませんでした。 だってチムチムの目の前には真っ白の衣服をまとい優しく微笑む大好きな笑顔があったのですから。 おしまい。 |
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